システム開発の世界では、要件定義書がプロジェクト成功の鍵を握ります。
しかし、その重要性にも関わらず、要件定義書の作成は難しく感じられることも多いですよね。
本記事では、要件定義書の基本から書き方、作成の流れ、必要な項目までをわかりやすく解説します。
この記事は、システム開発に携わるプロジェクトマネージャーやエンジニア、そして要件定義書に興味を持つすべての方を対象としています。
この記事を読むことで、要件定義書作成のスキルを向上させ、より効果的なシステム開発を行うための知見を得ることができます。
そして、株式会社QEDでは、ノーコード技術を駆使した革新的なシステム開発を提供しております。
要件定義の段階からプロジェクトを成功に導くために、ぜひ当社のサービスをご検討ください。
要件定義書とは?提案依頼書・情報提供依頼書との違い
システム開発やシステム構築プロジェクトにおいて、要件定義書は非常に重要なドキュメントです。
この文書は、開発するシステムの要件を明示し、プロジェクトの方向性を定めます。
要件定義書は、クライアントと開発者間の共通認識を形成し、プロジェクトの成功に不可欠な役割を果たします。
ここでは、以下の点について詳しく説明します。
- システム開発プロジェクトにおける要件定義の役割
- 要件定義書とは
- 提案依頼書(RFP)との違い
- 情報提供依頼書(RFI)との違い
- 3つの文書を作成する順番
システム開発プロジェクトにおける要件定義の役割
要件定義は、システム開発の初期段階で行われる重要なプロセスです。
このプロセスでは、クライアントのニーズを明確化し、開発するシステムに求められる機能や性能を特定します。
要件定義においては、ビジネス要件、ユーザー要件、システム要件などを包括的に分析します。
また、現状の課題や将来のニーズも考慮に入れます。
適切な要件定義を行うことで、プロジェクトの成功率が高まり、後々の手戻りを防ぐことができます。
要件定義書とは何か
要件定義書は、要件定義プロセスの成果をまとめた文書です。
これには、開発するシステムの目的、機能要件、非機能要件、制約条件などが詳細に盛り込まれます。
具体的にお伝えすると、システムの概要、ユーザーインターフェース、データフロー、セキュリティ要件やパフォーマンス要件などが含まれます。
また、システム設計やシステム構成に関する初期の検討事項も記載される場合があります。
要件定義書は、開発チームとクライアントの間で合意形成を図るための重要なツールとなります。
この文書は開発の進行に伴って更新され、プロジェクト全体を通じて適宜参照されます。
提案依頼書(RFP)との違い
提案依頼書(RFP: Request for Proposal)は、クライアントが複数のベンダー(ソフトウェアやハードウェア、ITサービスを提供する企業)に対して提案を依頼する際に使用される文書です。
RFPには、プロジェクトの概要や目的、要求される機能、予算、納期などが記載されます。
RFPの主要な目的は、適切なベンダーを選定することです。
一方、要件定義書はより詳細な内容を含み、具体的な実装方法や設計方針まで踏み込んで記述します。
要件定義書は特定のベンダーとの協力のもとで作成されることが多く、システムの詳細な仕様を策定します。
情報提供依頼書(RFI)との違い
情報提供依頼書(RFI: Request for Information)は、プロジェクトの初期に使用される文書です。
RFIは、ベンダーの技術力や提供可能なソリューション、実績などの情報を収集するために使用されます。
この文書は、市場調査や技術動向の把握に役立ちます。
要件定義書とは異なり、RFIは一般的な情報収集を目的としています。
RFIは具体的なプロジェクト要件を定義するドキュメントではなく、プロジェクトの可能性や方向性を探るためのツールです。
3つの文書を作成する順番
一般的に、これら3つの文書は次の順序で作成されます:
- 情報提供依頼書(RFI)
- 提案依頼書(RFP)
- 要件定義書
まずRFIで市場調査を行い、プロジェクトの実現可能性や最新技術の動向を把握します。
次にRFPでベンダーを選び、プロジェクトの大枠を決定します。
最後に、選ばれたベンダーと協力して詳細な要件定義書を作成します。
この順序により、プロジェクトの段階的な具体化が可能になります。
各文書は前段階の情報を基に作成されるため、プロジェクトの方向性が徐々に明確になっていきます。
これら3つの文書は、それぞれ異なる目的と役割を担っていますが、全てがプロジェクトの成功に不可欠です。
RFIとRFPがプロジェクトの準備フェーズで重要な役割を果たすのに対し、要件定義書はプロジェクトの具体的な内容を決定する上で中心的な役割を果たします。
これらの文書を適切に作成し活用することで、効率的かつ効果的なシステム開発やシステム構築が可能です。
システム構築の基礎となる重要な文書である要件定義書は、プロジェクトの成功に直結する要素と言えるでしょう。
要件定義書の作成目的
要件定義書を作成する主な目的として、以下があげられます。
- クライアントのニーズを明確化
- 開発範囲を限定
- 品質の基準を設定
クライアントのニーズを明確化
要件定義書の目的は、システム開発の際に、クライアントの要望と期待を具体的かつ詳細に明確化することです。
クライアントのニーズをより具体的に把握し、開発チームが目指すべき目標をよりはっきりと示します。
開発範囲を限定
要件定義書により、開発者たちに対して、求められる機能や性能、制約条件等を正確に伝えることができます。
開発チームがどのような範囲のシステムを開発するのかがはっきりと示され、無駄な労力の削減が可能です。
品質の基準を設定
要件定義書は、プロジェクトの進行状況の確認や、納品物の評価基準を明示する役割も果たします。
品質目標や性能要件が記載され、開発チームが達成すべき品質基準を明確にします。
未来のメンテナンスや機能追加の際にも参照される重要なドキュメントです。
要件定義書を正しく作成すれば、開発チームとクライアント間の認識のズレを最小限に抑えられ、円滑なコミュニケーション・効率的なシステム開発が可能です。
その結果、コスト削減や品質向上にもつながります。
提案依頼書(RFP)に記載すべき重要項目
提案依頼書(RFP)に記載すべき項目は、以下の9点です。
提案の背景 | プロジェクトが始まった理由や経緯 |
現在の課題 | 現状抱えている問題点や課題 |
目的・目標 | プロジェクトの狙いや達成したい成果 |
スケジュール・費用 | 重要なマイルストーンや納期・リリース日プロジェクトの期間や予算 |
依頼範囲・内容 | 求められる業務範囲や具体的なタスク |
機能要件 | システムが備える機能 |
非機能要件 | システムが満たす品質基準や性能要件 |
その他 | 特記事項や制約条件、選定基準等 |
納品成果物 | プロジェクト完了時に納品される成果物 |
これらの内容は、必ず記載するようにしましょう。
要件定義書は誰が書く?作成の流れは?
要件定義書は開発者側が作成します。しかし、この過程はクライアントと密接に協力して進められます。
システム開発プロジェクトの成功には、両者の綿密なコミュニケーションが不可欠です。
以下のステップに従って進められます。
- クライアントの要求をヒアリング
- 要求内容を検討
- 要件の優先順位を決める
- 要件定義書を作成
クライアントの要求をヒアリング
要件定義のプロセスは、クライアントの要求を丁寧にヒアリングすることから始まります。
この段階では、クライアントの業務内容、現状の課題、新システムへの期待などを詳細に聞き取ります。
開発者は、クライアントの事業目標やビジョンを理解し、システム要件を正確に理解することが重要です。
要求内容を検討
ヒアリングで得た情報を基に、開発者はシステムの要件内容を詳細に精査します。
この段階では、機能要件や非機能要件を明確化し、システム設計の基本方針を確定します。
また、技術的な実現可能性や、コスト、開発期間などの制約条件も考慮に入れます。
要件の優先順位を決める
全ての要件を同時に実現することは困難なため、要件の優先順位付けが重要になります。
クライアントと協議しながら、各要件の重要度や緊急性を評価し、優先順位を決定します。
この過程で、システム構築の段階的なアプローチや、将来的な拡張性についても検討します。
要件定義書を作成
優先順位が決まったら、開発者は要件定義書の作成を開始します。
要件定義書には、プロジェクトの目的、システムの概要、詳細な機能要件、非機能要件、制約条件、想定されるリスクなどを記載します。
また、システム構成図やデータフロー図なども含めることで、視覚的な理解を促進します。
要件定義書を作成するにあたって、留意すべき6つのポイントをまとめました。
- 専門用語を適切に使い、分かりやすさを意識する
- 具体的な数値や条件を示し、曖昧な表現を避ける
- 複雑な内容はイラストや図表を活用する
- 階層構造を活用し、情報を整理する
- 要件の重要度・優先度を明らかにする
- 一般ユーザーを想定し、配慮を示す
作成された要件定義書は、開発チーム内でレビューされ、必要に応じて修正が行われます。
その後、クライアントに提示され、内容の確認と承認を得ます。
この段階で、クライアントからのフィードバックを反映し、最終的な要件定義書を完成させます。
要件定義書の作成は反復的なプロセスであり、プロジェクトの進行に伴って更新される可能性があります。
完成した要件定義書は、その後のシステム設計や開発の基礎となる重要な文書です。
適切に作成された要件定義書は、プロジェクトの成功率を高め、効率的なシステム開発を可能にします。
要件定義書に記載すべき項目
要件定義書に記載すべき、主な項目は以下の通りです。
- 依頼の概要や背景
- 解決したい目的
- システムの具体的な機能
- セキュリティ・保守運用
- 予算やスケジュール
- 導入後のフロー
記載内容はプロジェクトの規模や特性に応じて調整し、関係者が共通の認識を持てるように努めましょう。
依頼の概要や背景
最初に、プロジェクトの概要や背景を明記します。
これには、システム導入の理由や、現在抱える問題点、改善が求められる状況などが含まれています。
解決したい目的
次に、システム導入によって達成したい目的を具体的に記述することができます。
業務効率化やクライアント満足度向上、コスト削減など、具体的な数値目標も設定します。
システムの具体的な機能
システムが提供すべき機能を詳細に記載します。
各機能について、名称や説明、対象ユーザー、関連する業務プロセス等を整理し、わかりやすくまとめましょう。
セキュリティ・保守運用
システムのセキュリティ要件や保守運用に関する方針を明記します。
情報漏洩対策やアクセス制限など、システム保護に関する方針を明確にすることが大切です。
また、定期的なバックアップや障害対応などの保守運用についても記述し、安定したシステム運用に関する情報を記載するようにします。
予算やスケジュール
プロジェクトの予算やスケジュールに関する要件を明記します。
開発費用や運用費用の予算を設定し、コスト管理を徹底することが大切です。
また、プロジェクトのマイルストーンや納期を示すことで、開発チームが進捗管理を容易に行えるようにします。
スケジュールに関しては、各フェーズの開始・終了日やリリース日など、具体的な日程を設定することが望ましいです。
導入後のフロー
システムを利用するユーザーの役割や業務プロセスの変更点、新たに必要となるスキルや研修計画など、導入後の運用に関わる情報を整理します。
また、システムの効果測定方法や改善提案の取り組みについても、具体的な指針を示すことが大切です。
要件定義書作成の進め方
要件定義書はプロジェクトの成功のために重要な役割を果たします。
以下の手順に従って、効果的な要件定義書の作成を進めましょう。
- 課題・目標を明確化する
- システムの大まかな構成を決める
- 機能要件の定義
- 非機能要件の定義
- スケジュール・予算などを決める
課題・目標を明確化する
はじめに、プロジェクトで解決すべき課題や達成すべき目標を明確化します。
関係者と議論を重ね、具体的な課題や目標をリストアップしましょう。
この工程では、プロジェクトの意義や価値が共有され、方向性が定まります。
システムの大まかな構成を決める
次に、システムの概要や大まかな構成を決定します。
システムの規模や機能の範囲を検討し、開発チームと関係者が共通の理解を持てるようにしましょう。
構成図(アーキテクチャ図)を作成することで、システム全体の概要を視覚的に理解しやすくなります。
この段階で、技術選定やプラットフォームの選択も検討し、プロジェクトの技術的な方向性を決定することができます。
機能要件の定義
機能要件は、システムが実現すべき機能を明確にするための要素です。
具体的な機能や操作手順をリスト化し、優先順位をつけましょう。
また、ユースケース図やワイヤーフレームを作成することで、機能要件の理解が深まります。
非機能要件の定義
非機能要件は、システムの品質や運用面での要求をまとめたものです。
セキュリティやパフォーマンス、保守性など、システム全体に関わる要件を定義します。
非機能要件を明確にすることで、開発チームが品質の高いシステムを構築できるようになります。
スケジュール・予算などを決める
最後に、プロジェクトのスケジュールや予算を設定します。
マイルストーンや納期、リソース割り当てなどを検討し、現実的な計画を立てましょう。
また、プロジェクトのリスク要因や課題に対処するためのアクションプランも考慮しておくことが大切です。
効率的な要件定義書作成のためのポイントと注意点
要件定義書は、システム開発プロジェクトの初期段階で作成される重要なドキュメントです。
以下のポイントに注意して、作成することが大切です。
- やるべき事を具体的に明記する
- 発注者と開発者で認識のすり合わせをする
- 提案依頼書(RFP)に沿って要件定義を行う
やるべき事を具体的に明記する
要件定義書の作成時には、やるべきことを具体的に明記することが大切です。
プロジェクトの目的や課題、要求事項を明確にし、それぞれの項目を詳細に書き出していくことで、関係者間の認識のずれを防ぎます。
具体的な記述には、機能やシステムの振る舞いを具体的なシナリオやユーザーストーリーで表現することが効果的です。
また、図や表を使って情報を視覚化することで、理解しやすくなります。
さらに、システムに関連する制約や法規制も忘れずに明記しましょう。
発注者と開発者で認識のすり合わせをする
要件定義書作成の過程では、発注者と開発者間で認識のすり合わせを繰り返し行います。
双方間で認識のずれが生じると、プロジェクトが円滑に進まない原因になります。
そのため、定期的にミーティングを開催し、進捗状況や課題、変更点などを共有しましょう。
また、発注者からのフィードバックを受け入れ、要件定義書を修正・更新することで、最終的な成果物に近づけていきます。
さらに、発注者と開発者が共同でリスク分析を行い、問題が発生した際の対策や優先順位を決定することも大切です。
提案依頼書(RFP)に沿って要件定義を行う
要件定義書は、提案依頼書(RFP)に沿って作成されることが多いとされています。
RFPには、システムに必要な機能や性能、スケジュール、予算、品質などが記載されているため、要件定義書はRFPに基づいて作成されます。
そうすることで、発注者と開発者の認識がマッチし、要件定義書の質の向上につながっていきます。
このように、要件定義書作成時には、具体的な記述や関係者間のコミュニケーションに重点を置き、RFPに沿って要件定義を行うことが重要です。
まとめ
いかがでしたか?
今回は、要件定義書の作成の流れ、作成時に注意するポイントなどについてご紹介しました。
要件定義書は、システム開発においてまず最初に作成するドキュメントであり、プロジェクトを成功へと導く重要なものです。
担当者は、要求定義書や提案依頼書(RFP)との違いを理解し、各ドキュメントの役割を認識しておく必要もあります。
システム開発の参考になる情報が盛り沢山となっているので、ぜひお役に立てれば幸いです。